介護職の待遇改善へ「適切な介護報酬の設定」を
厚生労働省は7月26日、介護・福祉分野の人材確保指針である「社会福祉事業に従事する者の確保を図るための措置に関する基本的な指針」の改正案を、社会保障審議会福祉部会(岩田正美部会長)に提出し、了承された。同部会での答申を経て、8月中には厚労省より告示される見込み。1993年に策定された同指針は、介護保険施行以後の介護・福祉分野での深刻な人材不足などを受け、大きく見直しが図られる。
見直し案では、介護職員の数的確保と質向上のために待遇改善は必須とし、介護報酬引き上げの可能性を示し、同時に受給者側には介護保険料の負担増もあり得る方向性も示した。外国人労働者の受け入れについては「労働市場への影響、滞在の長期化や定住化に伴う社会的コストの発生等の懸念等がある」とし、慎重な対応が必要だと指摘した。
見直しの柱として、▽介護職員の給与アップや労働時間短縮など労働環境の整備▽介護職員の地位向上のためのキャリアアップの仕組みの構築▽福祉・介護サービスの意義や重要性の周知・理解の促進▽未就業者や離職者など潜在的人材の掘り起こし▽他分野の人材や高齢者など多様な人材確保の促進――が挙げられた。
●介護職員60万人確保へ 介護報酬見直し待遇改善が急務
介護保険の要介護・要支援認定者数は04年の約410万人から、2014年には約600〜640万人に増加すると推計され、また障害福祉サービス利用者も、05年の約40万人が2011年には約60万人に達すると見込まれている。一方、04年で約100万人の介護保険サービス従事者は、後期高齢者人口の伸びや要介護認定者数の伸びにより、2014年には約140〜160万人が必要とされる。
介護職員の給与は相対的に低い状況が続いている。05年の平均年収をみると、福祉施設介護員は男性315万円で女性281万円、女性のホームヘルパーは262万円、女性のケアマネジャーは373万円で、全労働者の平均年収453万円を下回っている。そのような中、04年の1年間に介護サービスに従事した介護職員と訪問介護員のうち、離職した人の割合は20・2%で、全労働者に占める離職率17・5%(05年1年間)より高くなっている。
介護保険・障害福祉サービスともに需要が高まっていく一方で、それを支える介護職員確保の見通しは厳しい。日本介護福祉士会の調査では、介護福祉士の転職理由は「やりがいがない」「職場の人間関係」「給与が低い」の順に多い。
これらの状況をふまえ、今後の人材確保に必要な労働環境の改善策として、雇用側に対し、キャリアと能力に見合う給与体系を構築し、他分野の給与水準などもふまえて「適切な給与水準を確保すること」に努めるべきとした。そのために国には「適切な水準の介護報酬等を設定すること」を求めた。また、専門性の高い人材を配置した場合の介護報酬による評価についても検討するとした。一方、「国民は、必要な福祉・介護サービスの量や質の水準と併せて、これを確保するために必要となる負担の水準も考えていくことが求められる」とし、介護保険料などの負担増も示唆している。
そのほか、従業員9人以下の小規模事業所への週40時間労働制の導入、完全週休2日制普及による労働時間の短縮、従事者のメンタルヘルス対策、IT技術の活用による業務省力化や福祉用具の積極的活用による腰痛予防などを講じて、労働環境の整備に努めることを求めた。
●キャリアアップの仕組み構築
介護職員のキャリアアップを支援するため、▽働きながら介護福祉士や社会福祉士などの国家資格を取得できるよう配慮する▽国家資格保有者などに、より高い専門性を認証する仕組みを構築する――などを挙げる。介護福祉士では、重度認知症・障害への対応や管理能力などでより専門性を備える上級資格「専門介護福祉士(仮称)」を設けることが検討されている。
●潜在的有資格者の掘り起こし
05年5月末時点で約54・5万人いる介護福祉士資格取得者。04年9月時点では、介護福祉士の約4割が介護関連に従事していない潜在的人材とみられている。介護福祉士会によると、このうち約半数はいずれ介護業務に従事したい意向をもっている。このような有資格者に対する就業支援を行い、就業後も相談体勢を整え定着を支援する。
●高齢者や障害者も担い手に 多様な人材の参入促進
他分野からの就業支援や定着支援、高齢者が介護分野へ就業またはボランティア参加しやすいよう研修等を実施する、障害者の社会参加活動の一つとしての介護分野への就労支援などを挙げた。海外からの介護福祉士等の受け入れでは、日本人従業者との待遇の均衡を守るなど、適切な受け入れのために研修・指導体制を構築するよう求めた。